市民公開講座

人生を物語として紡ぎ出す方法
How to weave one’s life story

きたやま おさむ 精神科医・作詞家

【略歴】

1946年淡路島生まれ.72年京都府立医科大学卒業.ロンドン大学精神医学研究所にて研修後,北山医院院長を経,2010年まで九州大学大学院人間環境学研究院・医学研究院教授で,元日本精神分析学会会長.現在は,九州大学名誉教授,白鷗大学名誉教授,専門は精神分析学で北山精神分析室における臨床活動が主な仕事.著作は『劇的な精神分析入門』(みすず書房2007),『最後の授業』(みすず書房2010),『意味としての心』(みすず書房2014),『新版・心の消化と排出』(作品社2018)など多数.またミュージシャンとして洛星高校時代からバンド活動を始め,加藤和彦と「ザ・フォーク・クルセダーズ」で一世を風靡した.〈あの素晴しい愛をもう一度〉他で作詞家としても活躍,〈戦争を知らない子供たち〉によりレコード大賞作詞賞(1971)を受賞. 一般向けの近著は『良い加減に生きる➖歌いながら考える深層心理』(講談社2019).

【抄録】
  1. 「劇場」:19世紀末、精神分析の黎明期の或る患者は、自分の白昼夢様体験を「私的な劇場」と呼んだ。ヒステリー患者は演劇的と言われ、「行動化acting out」という概念は彼女たちの問題を説明するために生まれた。原語の独語agierenには「演じる」の意味があるが、残念ながら日本語ではうまく訳出されなかった。さらにプレイにも演劇の意味があるので、遊戯療法play therapyの演劇的要素が当然視され、そこでは治療関係は心の台本の劇化の場となり、この劇に参加しながら筋書きを読み取る治療者は相手役としてその筋書きに巻き込まれやすいことになる。
  2. 「劇としての人生」:劇的観点に基いた治療論は、反復する悲劇の語り直しを目論む。台本の書き換えは難しいが、「人生物語を紡ぎ出しながらその人生を生きる」という劇的観点からの「生き直す」という治療論が成立して、ここで我が国でも広く共有された「劇としての人生」という「浮世」の人生観が強く連動する。もちろん、日本の私小説の流行を支える人生演劇説は、シェークスピアやダンテの世界観にも通じる。
  3. 「心の台本」を読む:では、参加しながらまずは自分の人生の台本を読んでみよう。
    • 舞台の設定:劇には舞台が必要であり、その構造は尊重されねばならないという議論は治療構造論と呼ばれる。
    • 反復の発見:「今・ここ」のセラピィ関係、過去の親子関係、発症のときに、そして最近の職場、学校、家族などで繰り返される筋書きを発見する。
    • 言葉の発見:
      本当は……したいが(欲望)、
      それで……になるのが嫌で(不安)
      私は……する(防衛)
    • モデル作り:できた筋書きで人生をながめ、書き直し、よりふさわしいモデルとし、ときにこのモデルを言葉で信頼できる誰かと、より良い「人生物語」を紡ぎ直す。
  4. 人生は劇ではない:これは演じるものではなく、生きるためのものであり、劇的観点もそのためにある。

市民公開講座は会期である9月19日より25日の期間、本ホームページのトップページにて閲覧できるようになります。(参加費無料、事前登録の必要無し)

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